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貨幣の日本史 (朝日選書)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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永楽銭は日本向けに造られた貨幣だった
数ある渡来銭のなかでも明の永楽帝の時代に発行された永楽銭は、室町時代から江戸時代初期の日本人にとって、最もなじみ深く人気の高い銭だった。しかも永楽銭は明の国内通貨ではなかったらしい。明の初代洪武帝は1394年に銅銭の使用を禁止しており(後に解禁されるが)、永楽銭が鋳造された1408年頃は、銅銭は通用していなかった。つまり永楽銭は、日本向けの輸出品としての性格が強かったのだ。
さらに著者によれば、永楽銭の表面に描かれている「永楽通宝」の銘文についても、足利義満が1401年に最初に派遣した遣明船で渡航した日本人禅僧の仲方中正が永楽帝に依頼されて書いたものだという伝えがあるらしい。これが事実なら永楽帝はなかなかサービス気のある皇帝のようだ。
日本史をひもとけば、当時の室町将軍・足利義満は、明との勘合貿易を始めるために、長年にわたって大変な努力を払ったことが知られている。そして、その努力が永楽帝の即位によって実ると、義満は大変丁寧な国書を永楽帝に対して送っている。この二人の良好な関係があったからこそ、日本向けの(しかも日本人の銘による)永楽通宝の鋳造という形で結実したという史実を知りとても感銘を受けた。
大変広い視野から見た貨幣史
まず、和同開珎が最初は銅貨ではなく、銀貨として鋳造されたこと。その文字は唐の開元通宝のコピーであること。西洋では鋳貨は打圧して刻印されるが、中国を中心とするアジアの通貨は円形方孔で鋳型に流して作られることを明確に説明しています。
日本は宋銭、元銭、明銭、を輸入してきたことはよく知られていますが、それは中国の生糸、絹織物を輸入するための倭寇や朱印船貿易によってなされた対中貿易で大量に輸入されたことを、克明に述べられています。
また、日本が石見銀山などで大量産出する銀と大量の金の輸出貿易が、大航海期のポルトガルとオランダの勃興と衰退を決定付けたと言う指摘も興味深い話です。
幕末開港の時期にハリスが難題を言って、日本に不利な形でメキシコドルと日本の銀貨の交換レートを押し付け、それを金に換えて、莫大な金が流出したことは教科書で習いますが、その詳細も記されています。
1971年のニクソンショック後の日本の対応も、それに関連させて揶揄されています。
何より面白いのは、世界史とアジア史の中で日本を位置づけ、ダイナミックに貨幣史を描いている点で、類書に見られない鮮やかな切り口だといえましょう。
貨幣論の視点から見ても、見逃せない力作で、今日まで、この本の存在を知らなかったのは不思議なくらいです。たぶんロングセラーになるでしょう。
貨幣を通して見たユニークな日本通史
古代から近代に至る日本通史であるが、書名のとおり、貨幣を軸に据えて見ることにより、一般に知られていない日本の歴史が見えてくる。本書は、古代の富本銭の性格や和同開珎の手本となった唐銭の問題、中世の大量の宋銭の輸入と流通、中世末から近世初めにかけて大量に流出して世界史を動かした日本銀、近世の銅銭輸出と田沼意次の貨幣政策、開国と金流出の問題、と、貨幣の大きな流れを見ることによって、「歴史の大きな流れや、日本史と世界史のダイナミックなつながり」を鮮やかに描き出している。はしがきにあるように、このような通史は日本史家、古銭家、考古学者の、それぞれの成果を取り込んで初めて書くことができるものであろう。 本書は一般向けの書物ではあるが、もちろん最新の研究成果の裏付けを持っており、読みやすい文章と豊富な貨幣の図版によって、「貨幣」という国境を超えて流通するモノを通して語る歴史の面白さを再発見させてくれる。歴史に興味のある人と古銭のコレクターの双方に、ぜひ一読を勧めたい。
朝日新聞社
日本の貨幣の歴史 (日本歴史叢書) 歴博フォーラム お金の不思議―貨幣の歴史学 富本銭と謎の銀銭―貨幣誕生の真相 ヴェニスの商人の資本論 (ちくま学芸文庫) 古銭と紙幣―収集と鑑賞 無文銀銭から現行貨幣まで
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